消化器がん手術

腫瘍について

人間の身体には数十兆個の細胞が生体内におけるコントロールによって成り立っていますが、この細胞や組織が生体内の制御に反して自律的に増殖してできる組織細胞の塊を腫瘍と言います。周囲とは無関係に増え続ける異常な細胞は、身体に様々な影響を及ぼすことがあります。

良性腫瘍と悪性腫瘍

腫瘍には、良性腫瘍と悪性腫瘍があります。良性腫瘍は、一般的に発育速度が遅く、膨張するように増殖しますが転移はしません。腫瘍を切除することで、再発や転移を起こすことがないので命には影響を及ぼすことは多くありません。一方で、悪性腫瘍は、発育速度が速く浸潤性に増殖することも多く、さらに転移を起こすこともあります。悪性腫瘍に関しては明らかに悪い影響があり、これを「がん」と呼びます。

良性腫瘍と悪性腫瘍の違い

良性腫瘍で一般的に知られているものでは、いぼや子宮筋腫などがあります。消化器がんとは、食道・胃・大腸・膵臓・肝臓などの消化器にできた「がん」を言います。

  良性腫瘍 悪性腫瘍
細胞が大きくなるとき 膨らむように大きくなる くい込むように大きくなる(湿潤する)
大きくなる早さ 比較的緩やかに大きくなる 比較的速やかに大きくなる
転移するかどうか 転移はほとんどない 転移する
再発 ほとんどない あり
全身への影響 ほとんどない あり

がんの分類

がんが発生した細胞の種類によって、固形がんである癌腫や肉腫、血液がんなどの種類に分類されます。
癌腫:体の表面や管腔臓器(消化器、呼吸器、泌尿器・生殖器、乳房など)の表面を覆う上皮細胞から発生するもの
肉腫:上皮細胞以外の体の組織(筋肉、脂肪、血管、骨・軟骨など)を構成する非上皮細胞から発生するもの
血液がん:血球(白血球などの、血管や骨髄、リンパ節の中にある細胞)から発生するもの

消化器がんを治すには

消化器がんの最適で確実な治療方法は、がんの切除です。身体からすべてのがん細胞を取り除くことが確実です。手術できれいに取り切れること、そして手術後一定期間を経過しても再発しないことで、がんが完治したと考えられます。
目に見えないがん細胞一つひとつをすべて取りきれたかどうかは、その後再発しないかどうかでしかわかりません。

がんが治ったと判断する期間

手術後一定期間とはどの程度を言うのでしょうか。胃がんにおける再発の場合では、術後1年以内の再発が最も多く、2年以内の再発がおよそ75%とされています。5年以上経過してから再発が見つかることはほとんどないため、5年目の定期検査で再発がなければ完治したと考えられています。大腸がんに関してもほど同様のことがわかっています。
しかし、術後5年以上経過してから、残った胃や大腸にがんが見つかることがありますが、これらの多くは再発ではなく新しくできたがんです。したがって、術後5年以内に限らず、その後も定期的に内視鏡検査を受けることをおすすめしています。

がんの転移について

最初に腫瘍ができた原発部位から離れた部位にがん細胞が飛んで広がって腫瘍を作る状態を転移と言います。転移してできた腫瘍は、原発部位の腫瘍とタイプが同じです。例えば、大腸がんが肺に転移して、肺にがん細胞が見つかった場合は、肺がんではなく肺にできた大腸がんとされます。したがって、治療も大腸がんに準じて行われます。
がんの進行度によって、治療方法の選択とその予後の過ごし方が変わります。転移や浸潤があるかどうかで治癒の可能性が異なります。浸潤がある場合は、確実にがんと一緒に取り切れるかどうか、また腹膜や骨などに転移がある場合は元のがんをどんなに取り切ってもがんを治すことは難しくなります。
したがって、転移の有無や浸潤の程度を手術前に可能な限り明確にさせてから治療方針を決めることが重要です。場合によって、手術前や手術後に抗がん剤や放射線治療を追加、或いは手術を行わずに抗がん剤や放射線治療が最適な場合もあります。他の医療機関からご紹介になった場合、治療方針を決める上で必要と判断して前医で行われた検査を再度行うこともあります。また当院での診断あるいは治療が困難であると判断した場合は、より高次機能を有する大学病院などにご紹介することもあります。

がんの再発について

日本人の死因第一位を占めるがんは、あらゆる病気のうち最も死亡率の高い病気と知られています。がんは、転移と再発があるのでほかの疾患と異なり、悪性と言われています。がんの治療は、手術によってがん細胞を取り切ることが基本です(血液がんなど化学療法が主体の場合もあります)。現在では、手術を行う前に抗がん剤や放射線治療でがんを小さくしてから手術で取り除く場合もあります。がんが他の疾患と異なるのは、手術で完全に取り除いたとしても、数年後に再発する危険性が残っていることです。肉眼的にすべて切除できても、肉眼では見えないがん細胞が遺残する場合があるからです。さらに、全身にすでに散らばっている可能性もあるため、目に見えないレベルで転移していたり、再発したりする可能性が残っています。がんの進行度によっては、術後補助化学療法を受けるといった選択肢もあります。
がん治療を終えたら、再発の予防と再発の早期発見が最優先です。術後は、定期的に検査を行い再発の有無を調べます。再発の発見が遅れてしまうと、すでに全身にがんが広がって、手術では取り切れない事態に陥っていることがあります。がんの進行度によっては、術後補助化学療法を受けるといった選択肢もあります。がんは、早期発見・早期治療が最重要です。なるべく早期に発見し、完全に除去できると判断された場合は手術を、完全に除去しきれないと判断された場合は、抗がん剤や放射線治療を合わせて集学的治療を進めていきます。

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