大腸肛門疾患について
よくある肛門疾患では、いぼ痔(痔核)・切れ痔(裂肛)・あな痔(痔ろう)・肛門ポリープ・見張りイボ・肛門周囲腫瘍・血栓性外痔核などがあります。肛門疾患の症状でお悩みの方は、当院にお気軽にご相談ください。
いぼ痔(内痔核・外痔核)
肛門内側にできる内痔核・肛門外側にできる外痔核があります。主な原因は、下痢や便秘の症状、排便時の強いいきみ、長時間のデスクワークで、女性に多いのは妊娠・出産による血行不良・ストレスなどです。
内痔核
肛門上皮出口から2㎝奥にある歯状線と、その上部にある静脈叢が、排便時の強いいきみなどで過度な負荷を受け、うっ血したり、イボ状に腫れる状態を内痔核と言います。治療は、薬物療法のほか、内視鏡的痔核結紮術・ジオン注射・手術療法などを行います。
外痔核
肛門皮膚の静脈叢がうっ血、腫れ、強い痛みが生じる状態を外痔核と言います。症状が進行すると炎症を引き起こす恐れがあります。治療は、薬物療法を用いますが、強い痛みがある場合は手術療法を行うこともあります。
切れ痔(裂肛)
硬い便を排出するために強くいきむ時、または激しい下痢による勢いによって、肛門の皮膚が裂けた状態を切れ痔と言います。治療は、薬物療法によって症状を抑えていきますが、それと同時に生活習慣を改善していきます。原因ともなる下痢や便秘にならないよう、正しい排便習慣を定着させることが有効です。症状が慢性化し、悪化することで肛門狭窄を起こしたり、肛門ポリープや見張りイボなどを併発することがあります。治療は、薬物療法を行い、慢性化してしまった場合は手術療法を行います。
穴痔(痔ろう)
肛門周囲に膿が溜まって腫れてくる肛門周囲膿瘍が、痔ろうの前兆です。この肛門周囲膿瘍をそのまま放置することで、炎症が酷くなり肛門内部と外部がつながるトンネルが出来てしまいます。この状態が痔ろうです。痔ろうを放置すると、まれにがん化するおそれがあるので、痔ろうの症状がある方は早めに専門の医療機関を受診し、適切な治療を受けてください。痔ろうの治療は手術療法が一般的です。
尖圭コンジローマ
ウイルス感染が原因の病気です。感染症のため、パートナーと一緒に治療を受けます。一緒に治療しないと繰り返し再感染を起こすことがあります。症状としては、小さいイボがたくさんできるので、切除や焼灼によって治療を行います。
肛門周囲膿瘍
痔ろうの前段階です。肛門周囲膿瘍の段階で治療を受けることで、痔ろうにならずに済むことが期待できるので、早めに受診することをおすすめしています。下痢などが原因の場合が多く、肛門周辺の小さな窪みに便が侵入し、細菌に感染して発症します。膿が溜まり、炎症を起こしている状態なので、強い痛みや腫れ、発熱などの症状が見られます。手術治療によって膿を排出すれば痛みは治まります。術後、経過に注意しないと痔ろうを発症してしまうので気を付けましょう。肛門周囲膿瘍をそのまま放置して肛門周囲皮膚に穿破すると、肛門の内外をつなげるトンネルを作ることとなり痔ろうになります。さらに放置すると、瘻管と呼ばれるトンネルが縦横複雑に伸びてしまい、治療が困難になってしまうので注意が必要です。
肛門ポリープ
切れ痔が慢性化し、再発を繰り返すと皮膚が硬くなり肛門にイボ状の突起物が出来ます。この突起物が肛門ポリープです。排便時に、表面に出てきたり、排便後に中に戻ったりを繰り返すことがあります。これを放置すると、次第に肥大化し、また根元が裂けてしまうこともあります。切れ痔が原因ですが、肛門ポリープは痔ではなく、がん化する心配もありません。
見張りイボ
内痔核に似ていますが痔ではなくいぼ痔ではなく切れ痔です。慢性的に肛門皮膚が裂けて(切れ痔)炎症を繰り返すと、裂け目の周りの皮膚は「イボ」のように盛り上がってくることがあり、これを見張りイボと言います。塗り薬による保存的療法が一般的な治療方法です。イボの大きさなどによって手術を検討することもあります。
血栓性外痔核
排便時の過度ないきみが原因になることが多く、外痔核という名称ですが、いぼ痔の痔核とは異なる病気です。外痔核の静脈の中に血栓(血の塊)ができたものです。血豆のようなもので、しこりが生じ、強い痛みがあるのが特徴です。自然治癒することがほとんどですが、症状によっては切開が必要な場合もあります。
肛門疾患に関するよくある質問
お尻の違和感や痒みなど、病名がわからなくても受診して良いですか?
もちろんです。お尻のトラブルは「いぼ痔・切れ痔・痔ろう」だけではありません。 「なんとなく違和感がある」「残便感がある」「下着が汚れる」といった症状の中に、治療が必要な病気が隠れていることがあります。日本大腸肛門病学会の専門医が、問診と診察で原因を突き止めますので、病名が分からなくてもお気軽にご相談ください。
お尻がたまらなく痒いです。市販の薬を塗っても治りません。
「肛門そう痒症(こうもんそうようしょう)」の可能性があります。 原因は、カビ(カンジダ等)の感染、アレルギー、そして意外に多いのが「洗いすぎ(ウォシュレットの使いすぎ)」による皮膚バリアの破壊です。 原因によって薬の使い分け(ステロイド剤か、抗真菌薬か等)が必要なため、自己判断で市販薬を使い続けると悪化することもあります。早めに医師の診察を受けてください。
排便時に赤いものが出てきます。「いぼ痔」とは違うのですか?
いぼ痔の可能性もありますが、高齢の女性などの場合、直腸の粘膜そのものが反転して出てくる「直腸脱(ちょくちょうだつ)」の可能性があります。 いぼ痔は「血管の腫れ」ですが、直腸脱は「腸の脱出」であり、こぶし大の赤いボールのようなものが出るのが特徴です。いぼ痔とは治療法や手術法が異なりますので、専門医による正しい鑑別診断が必要です。
肛門の周りに皮膚のたるみ(出っ張り)があります。取った方がいいですか?
それは「スキンタグ(皮垂/ひすい)」と呼ばれる、痔が治った跡などの皮膚のたるみである可能性が高いです。 病気ではないので放置しても害はありませんが、排便後にきれいに拭き取れず、かゆみや炎症の原因になっている場合や、美容的に気になる場合は、日帰り手術で切除することも可能です。
「ただの痔」か「大腸がん」か心配です。検査はできますか?
はい、可能です。出血や便通異常は、痔の症状でもありますが、大腸がんや直腸がんのサインでもあります。 当院では内視鏡検査(大腸カメラ)を行っており、肛門の入り口だけでなく、腸の奥までしっかり調べることで、がんやポリープが隠れていないかを確実に診断(鑑別)します。安心のために一度検査を受けることをおすすめします。
お尻を清潔にするために、温水洗浄便座(ウォシュレット等)はしっかり使った方がいいですか?
実は「使いすぎ」は逆効果です。 排便のたびに強い水圧で洗いすぎたり、石鹸でゴシゴシ洗うと、肛門を守っている必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥して痒くなる「肛門そう痒症」の原因になります。 お湯でサッと流す程度にし、水圧は「弱」で、時間は数秒〜10秒程度に留めるのが、お尻に優しいケア方法です。




