「最近、おしりに違和感がある・・・」 「排便のとき、トイレットペーパーに血が付いた・・・」
その症状、「これって痔(じ)なの?」と、ひとりで不安に思っていませんか?
おしりの症状は非常にデリケートなため、誰にも相談できず、インターネットで検索しては一喜一憂している方も多いかもしれません。
この記事では、町田胃腸病院の専門医が、「痔」とは何か、ご自身の症状が痔の可能性があるのかをチェックする方法、そして、なぜおしりの違和感を放置してはいけないのかを詳しく解説いたします。
そもそも「痔(じ)」って何ですか?
「痔(じ)」とは、肛門やその周辺に起こる病気の総称です。 「痔は体質だから」「恥ずかしい」と我慢してしまう方も多いのですが、痔はれっきとした治療対象の「病気」です。決して珍しいものではなく、日本人の成人のうち3人に1人が痔に悩んでいるとも言われるほど、非常に身近な疾患です。
痔の主な3つのタイプ
いぼ痔(痔核:じかく)
最も多いタイプです。肛門にいぼ状の腫れ(血管のこぶ)ができます。肛門の内側にできる「内痔核」と、外側にできる「外痔核」があります。主な症状は出血や脱出(飛び出すこと)です。
切れ痔(裂肛:れっこう)
硬い便の通過などによって、肛門の出口付近の皮膚が切れる状態です。排便時の強い痛みや、ペーパーに付く程度の出血が特徴です。
痔ろう(あな痔)
肛門の周囲に膿(うみ)のトンネルができてしまう状態です。肛門の周りが腫れて痛んだり、膿が出たりします。痔ろうは市販薬や自然治癒では治らず、手術が必要になります。
このように、「痔」とひとことで言っても、タイプによって症状も治療法も全く異なります。 「痔は放置していればそのうち治る」というのは誤解であり、タイプによっては悪化したり、手術でしか治せなくなったりすることもあります。
自分でできる!痔の症状セルフチェックリスト
【出血】でチェック
- トイレットペーパーに鮮血(真っ赤な血)が付く ⇒ 切れ痔、いぼ痔の両方の可能性があります
- 便器が真っ赤になるほど、血がポタポタ垂れる ⇒ いぼ痔(内痔核)の可能性が高いです
- 便に血が混じっている(暗赤色、粘液っぽい)
- ※要注意!) 痔ではなく、大腸や直腸など、より奥からの出血(大腸がん、潰瘍性大腸炎など)の可能性があります。
【痛み】でチェック
- 排便の時だけ、紙で切ったように「ピリッ」「チクッ」と痛む ⇒ 切れ痔(裂肛)の可能性が高いです
- 排便後もしばらく「ジンジン」とした痛みが続く ⇒ 切れ痔が慢性化している可能性があります
- 突然、肛門のまわりが腫れて「ズキズキ」と激しく痛む ⇒ 血栓性外痔核(血豆)や、肛門周囲膿瘍(痔ろうの初期)の可能性があります
【腫れ・脱出】でチェック
- 排便時に、肛門から何か(いぼ)が飛び出してくる ⇒ いぼ痔(内痔核)の可能性が高いです
- 飛び出してきたものが、指で押さないと戻らない ⇒ 進行したいぼ痔(内痔核)です
- 常に肛門から何か(いぼ)が出たままになっている ⇒ 重度のいぼ痔(内痔核)です。手術が推奨されます
- 肛門の外側に、ぷっくりとした腫れがある ⇒ いぼ痔(外痔核)の可能性があります
【かゆみ・その他】でチェック
- 肛門のまわりがムズムズする、かゆい ⇒ 切れ痔やいぼ痔の影響で粘液が漏れ、皮膚炎を起こしている可能性があります
- 下着が膿(うみ)で汚れる、ベタベタする ⇒ 痔ろう(あな痔)の可能性が強く疑われます
- 便が出切らない感じがする(残便感) ⇒ いぼ痔(内痔核)が大きくなっているか、直腸の病気の可能性があります
自己判断は危険!「おしりの違和感」を放置してはいけない理由
セルフチェックで当てはまるものがあったとしても、「やっぱり痔だったか」「市販薬で様子を見よう」と自己判断してしまうのは非常に危険です。 おしりの違和感や症状を放置してはいけない理由は、大きく3つあります。
痔が悪化・慢性化する恐れ
「いぼ痔」や「切れ痔」は、初期段階であれば生活習慣の改善やお薬(保存的治療)で治癒することが多い病気です。 しかし、放置して慢性化させてしまうと、お薬では治らない状態に進行することがあります。
・切れ痔が慢性化して肛門が狭くなる(肛門狭窄)
・いぼ痔が常に脱出したまま戻らなくなる(嵌頓:かんとん)
ここまで進行すると、ジオン注射(ALTA療法)や手術(切除術)といった、より負担の大きい治療が必要になる可能性があります。
市販薬では治らない痔(痔ろう)もある
もし、あなたの症状の原因が「痔ろう(あな痔)」だった場合、市販薬や塗り薬で治ることは絶対にありません。 痔ろうは、肛門の周囲にできた膿のトンネル(瘻管)を手術で取り除かない限り、完治しない病気です。放置するとトンネルが複雑化し、手術が難しくなることもあります。
【最重要】大腸がん・直腸がんを見逃す危険性
これが、自己判断で最も怖いリスクです。 おしりからの出血や残便感といった症状は、痔だけでなく「大腸がん」や「直腸がん」といった命に関わる病気の初期症状と非常によく似ています。「どうせ痔だろう」と市販薬を使い続けて放置していた結果、がんの発見が遅れ、進行した状態で見つかるというケースは決して稀ではありません。「痔の出血」か「がんの出血」かを見分けることは、専門医による精密検査(大腸カメラなど)でなければ不可能です。
町田胃腸病院の専門医(肛門科)はこうして診断します
「病院に行きたいけれど、おしりを見せるのが恥ずかしい…」 「診察や検査は痛いのでは?」 こうした不安から、受診をためらってしまう方は非常に多いです。 当院では、患者さんのプライバシーと「痛みのない診療」に最大限配慮し、以下のような流れで正確な診断を行います。
Step 1:問診
まずは個室の診察室で、医師が症状について詳しくお伺いします。 「いつから症状があるか」「排便時の痛みや出血の程度」「おしりの違和感」など、気になることを具体的にお話しください。 (※他の患者さんに話が聞こえることはありませんのでご安心ください。)
Step 2:視診・触診(患部の状態を拝見します)
診察台に横になっていただきます(通常は左側を下にした横向きの体勢です)。 すぐに下着をおろすのではなく、まず腰に大きなタオルをお掛けします。その後、必要な部分だけタオルをめくり、医師が目で見て(視診)、指で触れて(触診)、肛門周辺の状態(腫れ、切れ、いぼ痔の有無など)を確認します。 この際、潤滑剤(ゼリー)を使用しますので、痛みはほとんどありません。
Step 3:肛門鏡検査(肛門の中を詳しく調べます)
視診・触診では確認できない肛門の内部(いぼ痔や切れ痔の正確な位置・状態)を、肛門鏡という専用の器具を使って確認します。 この検査も潤滑剤(ゼリー)を使用し、ゆっくり挿入します。検査自体は数分で終了します。 ここまでの検査で、ほとんどの肛門疾患(痔)の診断は確定します。
(必要に応じて)大腸カメラ(内視鏡検査)
問診や診察の結果、出血の原因が痔ではなく、大腸がんや直腸がん、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)の可能性があると医師が判断した場合は、大腸カメラ(内視鏡検査)をお勧めすることがあります。 当院は消化器・内視鏡の専門クリニックでもありますので、安心して検査を受けていただけます。
痔に関するよくある質問
セルフチェックで当てはまりました。市販薬で様子を見ても良いですか?
市販薬で一時的に症状が和らぐこともありますが、自己判断での市販薬の使用は推奨できません。 理由は2つあります。1つは、ご自身の症状が市販薬の適応外である「痔ろう(あな痔)」の可能性や、悪化して手術が必要な「いぼ痔」「切れ痔」の可能性があることです。 2つ目は、最も怖い「大腸がん」の出血を「痔の出血」と勘違いし、発見が遅れてしまうリスクがあるためです。 まずは一度、専門医の診断を受け、ご自身の症状の原因を正確に突き止めることが大切です。
肛門科の診察や検査は、痛いですか?
「おしりの診察は痛そう」というイメージをお持ちの方も多いですが、ご安心ください。 診察(視診・触診)や肛門鏡検査では、必ず潤滑剤(ゼリー)を使用し、患者さんの緊張を和らげるよう、医師が丁寧に行います。 炎症がひどく痛みが強い場合は、無理な検査は行わず、まずはお薬で痛みを和らげる治療を優先することもあります。
女性でも受診しやすいですか?
はい。痔は性別に関わらず多くの方が悩む病気であり、当院にも多くの女性の患者さんがご来院されています。 当院では、診察室は個室であり、診察台では腰にタオルをお掛けして必要最小限の露出で診察を行うなど、プライバシーに最大限配慮しています。 「恥ずかしい」というお気持ちは十分理解しておりますので、安心してご相談ください。
妊娠中・授乳中でも痔の治療はできますか?
妊娠中や出産後は、ホルモンバランスの変化やいきみ、便秘などにより、痔(特にいぼ痔や切れ痔)を発症・悪化させやすい時期です。 妊娠中は、胎児への影響を最優先に考え、手術は行わず、基本的には軟膏などのお薬を用いた保存的治療で症状を和らげます。 授乳中の方も、使用できるお薬が限られるため、必ず医師にご相談ください。 町田市で出産・育児中のお母さんも、我慢せずお気軽にご相談ください。
生理中でも診察は受けられますか?
はい、生理中でも診察は可能です。 ただし、経血量が多い日などは、出血が痔によるものか生理によるものか、診断がつきにくい場合があります。 もし可能であれば、生理期間を避けてご予約いただく方が、より正確な診断が可能です。 しかし、「痛みが我慢できない」「急な出血で不安」といった場合は、生理中でもためらわずにご来院ください。



