手術後の「間違ったケア」をしていませんか?専門医が教える、痔の治療後の過ごし方と再発防止策

痔の治療や手術、本当にお疲れ様でした。 長年の悩みだった痛みや不快感から解放され、ホッとされていることと思います。また、痔の治療や手術前で、どういうリスクや生活を送ることになるか不安、という方もいらっしゃるかと思います。
痔の治療は「病院で処置を受けたら終わり」ではありません。 特に、痔(いぼ痔・切れ痔・痔ろう)の原因の多くは、便秘や下痢、排便時のいきみといった「生活習慣」にあります。 せっかく治療で良くなっても、以前と同じ生活習慣に戻ってしまえば、残念ながら再発してしまうリスクがあるのです。
このページでは、痔の治療後・手術後の大切な過ごし方や、再発を防ぐためにご自身でできるケアについて、専門医が詳しく解説します。 二度と痔に悩まない快適な生活のために、ぜひ参考にしてください。

【重要】もう二度と繰り返さないために。「おしりに優しい生活」3つのポイント

手術や治療で今ある痔が治っても、痔になってしまった「原因(生活習慣)」が変わらなければ、また数年後に再発してしまうかもしれません。 二度とあの辛い痛みを味わわないために、今日からできる3つのポイントを一緒に見直してみましょう。

トイレに「スマホ」を持ち込んでいませんか?(排便習慣)

トイレに入ると、ついスマホを見たり本を読んだりして、長居していませんか? 実は、便座に座っている姿勢は、それだけで肛門に大きな負担がかかっています。トイレは「3分以内」が目標! 用が済んだらすぐに出ましょう。「まだ出そうかな?」と無理にいきんで出し切ろうとするのは、おしりにとって最大のNG行為です。便意がないのに行かない 「朝だから行かなきゃ」と、便意がないのにトイレにこもっていきむのはやめましょう。自然な便意が来てからトイレに行くのが正解です。

「便秘」や「下痢」を繰り返していませんか?(食事・便通)

「硬い便」が肛門を傷つけるのはもちろんですが、実は勢いよく出る「下痢」も、肛門にとっては大きなダメージになります。 目指すべきは、力を入れなくてもスルッと出る「バナナ状の便」です。「食物繊維」と「水分」は足りていますか? 海藻、キノコ、野菜などの食物繊維と、十分な水分を意識して摂りましょう。これらが「いい便」を作ってくれます。お酒や辛いもの、摂りすぎていませんか? アルコールや香辛料は、肛門を刺激してうっ血(血流が悪くなること)させたり、炎症を悪化させたりします。特に治療直後は、「刺激物」は控えめにしましょう。

おしりが「冷え」て「うっ血」していませんか?(生活環境)

痔の正体の一つは、肛門の静脈がうっ血してできた「こぶ」です。つまり、血行不良は大敵です。デスクワークで座りっぱなしではありませんか? 長時間座りっぱなし、立ちっぱなしは、おしりの血流を悪くします。1時間に1回は立ち上がったり、ストレッチをしたりして、血を巡らせてあげましょう。湯船に浸かっていますか? お風呂(入浴)は、おしりを清潔にするだけでなく、温めて血行を良くする「最高のアフターケア」です。シャワーだけで済ませず、なるべく湯船に浸かっておしりを労わってあげてください。

要注意!治りを遅らせてしまう「間違ったケア」

手術や治療を受けた後は、「一刻も早く治したい」「傷口だからバイ菌が入らないように清潔にしなきゃ」と、ケアに力が入ってしまうものです。 そのお気持ちは痛いほどよく分かります。しかし、実は「良かれと思ってやっているその行動」が、かえって傷の治りを遅らせたり、痛みを長引かせてしまったりする原因になっていることが少なくありません。 多くの患者さんが無意識にやってしまいがちな「意外なNG行動」をまとめました。痔の治療後でない方も、間違った対処法をしていないか、一緒に確認しながら見ていきましょう。

温水洗浄便座(ウォシュレット等)で「洗いすぎ」ていませんか?

「傷口に便がついたら大変だから、しっかり洗わなきゃ!」と思っていませんか? 実は、これこそが最も多い間違いケアの代表例です。術後のデリケートな皮膚や粘膜にとって、温水洗浄便座の強い水流は「刺激」以外のなにものでもありません。 必要以上に強い水圧で洗ったり、長時間洗浄し続けたりすると、傷を治そうとして体が一生懸命作っている「新しい皮膚(幼若な組織)」まで一緒に洗い流してしまうのです。 また、水圧の刺激で血管が開き、せっかく止まっていた血がまた出てきてしまう(再出血)リスクも高まります。
【正解のケア】 水圧は必ず「最弱(ソフト)」に設定し、時間は「5秒~10秒程度」サッと汚れを落とすだけに留めましょう。 「洗い流す」というよりは「優しくすすぐ」イメージです。 洗浄後は、トイレットペーパーでゴシゴシこすらず、水分を吸い取るように優しくポンポンと押さえて拭いてください。

「残便感(便が残っている感じ)」を無理に出そうとしていませんか?

特に、ジオン注射や切除手術を受けた直後の患者さんからよくご相談いただくのが、「トイレに行っても、まだ便が残っている感じがしてスッキリしない」というお悩みです。この「スッキリしない感じ(残便感)」、実は「便」ではなく「術後の腫れ」であるケースがほとんどなのです。 手術直後の肛門は、治療の影響で少し腫れぼったくなっています。肛門のセンサーは非常に繊細なので、この「腫れによる圧迫感」を「そこに便がある」と脳が勘違いしてしまうのです。ここで「まだ残っているはずだ!」と信じて、空っぽの状態でトイレに座り続け、無理やりいきんで出そうとするのは絶対にやめましょう。 傷口に無用な圧力をかけ続け、痛みや出血を悪化させる最大の原因になります。
【正解のケア】 ある程度の量の便が出たら、まだ何かが残っている感じがしても、「これは手術の腫れだから、出なくて当たり前」と割り切って、トイレから出てください。 この違和感は、傷が治り、腫れが引いていくにつれて自然と消えていきます。焦らず、おしりの感覚が戻るのを待ちましょう。

「消毒」しなきゃと思っていませんか?

「傷口だから消毒液を使ったほうがいいですか?」と聞かれることがありますが、自己判断での消毒は控えてください。 市販の強い消毒液は、バイ菌だけでなく、傷を治そうとする正常な細胞まで攻撃してしまうことがあります。
【正解のケア】 肛門の傷のケアにおける基本は、消毒ではなく「洗浄(洗い流すこと)」と「血行促進(温めること)」です。 お風呂に入って石鹸(泡立てたもの)で優しく洗い、シャワーで流すだけで十分清潔は保てます。医師から特段の指示がない限り、過度な消毒は不要です。

治療後にこんな症状があったら?

正しいケアをしていても、治療後や手術後は、おしりの状態が完全に安定するまで少し時間がかかります。 自宅で過ごしているときに「あれ?これって大丈夫かな?」と不安になりやすい症状についてお答えします。

排便のときに少量の血が出ます。大丈夫ですか?

トイレットペーパーに付く程度なら、心配ありません。 手術の傷が完全にふさがるまで(術式にもよりますが約1ヶ月程度)は、排便時に少量の出血や、うすい血が混じった「浸出液(体液)」が出ることがよくあります。 これは傷が治っていく過程で起こる正常な反応ですので、あまり神経質にならなくて大丈夫です。ナプキンやガーゼを当てて様子を見てください。ただし、「便器が真っ赤になるほどポタポタと血が出る」「血が止まらない」「レバーのような血の塊が出る」といった場合は、すぐにご連絡ください。

肛門から「糸」のようなものが出てきました。

手術で使用した「溶ける糸」の可能性が高いです。 結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)などの手術を受けた場合、傷を縫い合わせた糸が、傷の治りとともに自然に取れて出てくることがあります。 これは順調に治っている証拠ですので、無理に引っ張ったりせず、自然に取れるのを待つか、流してしまって構いません。

いつからお酒を飲んでもいいですか?

医師の許可が出るまでは(最低でも1週間~2週間)控えてください。 「もう痛くないからいいだろう」と自己判断で飲酒してしまうのが、術後トラブルで最も多い原因の一つです。 アルコールは全身の血行を急激に良くするため、せっかくふさがりかけた傷口から再出血したり、急激に腫れや痛みが強くなったりします。 「傷が治るための我慢期間」と思って、しばらくはノンアルコールで過ごしましょう。

数日経って、痛みが強くなってきた気がします。

排便時の痛みが続く場合は、便が硬くなっている可能性があります。 手術後は「痛いから」と無意識に排便を我慢してしまいがちです。しかし、我慢すると便の水分が吸収されてカチカチになり、その硬い便を出すときに傷口を刺激して痛みが強くなる・・・という悪循環に陥ることがあります。処方された痛み止めはもちろん、「便を柔らかくする薬」を適切に使い、水分をしっかり摂って、「柔らかい便をスルッと出す」ことを最優先にしてください。 それでも痛みが激しくなる、熱が出るといった場合は、炎症を起こしている可能性もありますので、早めに受診してください。

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